手続きガイド

過半数代表者の選び方
就業規則を変える前に、組合のない会社がやること

労働組合のない会社が就業規則を変えるときは、先に従業員の中から過半数代表者を選び、その人の意見を聴きます。誰がなれるか、会社が決めてはいけないのはどこか、どう選べばいいかを条文にそって並べました。

最終確認日:2026年9月25日(労働基準法・同施行規則の条文を e-Gov 法令検索で、選出の考え方を厚生労働省の資料で確認)

2026年10月1日のカスハラ対策の義務化に合わせて就業規則に条文を足す会社では、届出の前に「従業員代表の意見書」が要ります。組合がない会社だと、その代表をまだ一度も選んだことがない、というところから始まることが多いはずです。カスハラの就業規則規定例で足す条文を決めたら、次はこのページの手順です。

なぜ代表者を選ぶのか

労働基準法90条1項は、就業規則を作るときも変えるときも、会社が従業員側の意見を聴くよう定めています。聴く相手は、従業員の過半数でつくる労働組合があればその組合、なければ「労働者の過半数を代表する者」です。同じ条の2項で、届出にはその意見を書いた書面(意見書)を添えることになっています。

就業規則の作成と届出が義務になるのは、常時10人以上の労働者を使う会社です(労働基準法89条)。10人未満の会社でも、規則を作って届け出るなら同じ手順を踏むのが無難です。

過半数代表者になれる人の条件

労働基準法施行規則6条の2第1項は、過半数代表者を次の2つの両方にあてはまる人と定めています。

#条件実務での意味
1労働基準法41条2号の「監督又は管理の地位にある者」でないこと労務管理について経営者と一体の立場にある人(いわゆる管理監督者)は選べない。肩書きではなく実態で決まる
2代表者を選ぶことを明らかにして行う投票・挙手などの手続きで選ばれ、使用者の意向で選ばれたものでないこと「何のための代表か」を先に知らせてから、従業員自身が選ぶ

事業場に管理監督者しかいない場合は、就業規則の意見聴取については2の条件だけを満たせばよいとされています(同条2項)。

「過半数」の数え方にも注意が要ります。厚生労働省は、正社員だけでなくパートタイム労働者やアルバイトも含めた、事業場のすべての労働者の過半数を代表している必要があると説明しています。正社員だけで挙手をとって決めた、という形では足りません。

こう選ぶと無効になりやすい

厚生労働省は、使用者が指名した場合や親睦会の幹事などを自動的に選んだ場合について、その人は協定のために選ばれたわけではないので36協定は無効になる、と説明しています。親睦会の代表者を過半数代表者と認めなかった最高裁判決もあります(トーコロ事件・最高裁第二小法廷 平成13年6月22日)。どちらも36協定の話ですが、就業規則の意見聴取で聴く相手も同じ施行規則6条の2の代表者です。

会社が「候補者を募る」「投票の場を用意する」「結果を記録する」のは、選ぶ手続きを整えることなので問題ありません。避けるのは、誰にするかを会社が決めることです。

選ぶ手順

  1. 目的を知らせる:「就業規則の変更(カスハラ対策の条文の追加)について、会社が意見を聴く相手となる過半数代表者を選ぶ」と、全員に書面か社内メール・掲示で知らせる。パート・アルバイトも宛先に含める
  2. 候補を出してもらう:立候補か、従業員どうしの推薦で候補を出す。会社は候補者を決めない
  3. 選ぶ:投票、挙手、回覧で信任・不信任を書いてもらう方法など。全員が参加できる方法にする
  4. 過半数を確かめて記録する:全労働者の数と、信任した人の数を残す。誰が選ばれ、どの方法で、いつ決まったかを1枚にまとめておくと、後で聞かれたときに説明できる
  5. 意見を聴く:変更する条文を代表者に渡し、意見を聴く。代表者が意見をまとめるために、社内メールなどの事務機器や場所を使えるようにする(施行規則6条の2第4項の「必要な配慮」)
  6. 意見書を添えて届け出る:代表者の意見を書いた意見書を、変更後の就業規則と一緒に労働基準監督署へ出す

代表者であること、代表者になろうとしたこと、代表者として正当な行為をしたことを理由に、その人を不利に扱ってはいけません(施行規則6条の2第3項)。

御社がいつまでに何をするかは、従業員数と組合の有無で変わります。

3つ選ぶと、足す条文と、代表者の選出から届出までの順番が画面に出ます。

条文と順番を出す →

よくある質問

社長が「この人に頼む」と決めてはいけないのですか?

いけません。施行規則6条の2は、過半数代表者を「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」と定めています。厚生労働省も、使用者が指名した場合は適正な選出にならないと説明しています。

課長や店長は過半数代表者になれますか?

肩書きではなく、労働基準法41条2号の管理監督者にあたるかで決まります。管理監督者にあたる人はなれません。事業場に管理監督者しかいない場合は、就業規則の意見聴取について例外があります(施行規則6条の2第2項)。

パートやアルバイトも「過半数」の数に入りますか?

入ります。厚生労働省は、パートタイム労働者やアルバイトを含む事業場のすべての労働者の過半数を代表している必要があると説明しています。

代表者が就業規則の変更に反対したら、届出はできませんか?

労働基準法90条が求めているのは、意見を聴くことと、その意見を記した書面を届出に添えることです。同意を得ることまでは条文に書かれていません。反対の意見が出たときも、その意見を書いた意見書を添えます。

出典(一次情報・いずれも2026年9月25日に確認)
  1. e-Gov法令検索「労働基準法」(89条 作成及び届出の義務・90条 作成の手続)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  2. e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(6条の2 過半数代表者)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
  3. 厚生労働省 スタートアップ労働条件「36協定の過半数代表者の要件」Q&A(指名・親睦会幹事の自動選任、すべての労働者の過半数、必要な配慮)
    https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/hatarakikatakaikaku/q3.html
  4. 中央労働委員会 あっせん事例「労働者の過半数代表者の選出方法」(トーコロ事件 最二小判平13・6・22 の要旨)(PDF)
    https://www.mhlw.go.jp/churoi/chyousei_jirei/dl/15.pdf

条件・禁止事項・届出の記述は上記の一次情報にもとづいています。「選ぶ手順」の並びと記録の残し方は当サイトの実務上の整理で、法令が定める様式ではありません。

※このページは、制度の一般的な仕組みを解説する情報提供を目的としています。個別の事業所への当てはめは事情によって変わります。最新の正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署にご確認ください。個別の相談対応や書類作成の代行(社会保険労務士業務)は行っていません。