最終確認日:2026年7月9日(カスハラ対策義務化の全体像で確認済みの一次情報にもとづく)
現場で一番判断に迷うのは、法律の条文そのものではなく「目の前で起きているこの状況はどちらなのか」という当てはめです。ここでは、指針が示す判断基準を実際の場面に当てはめる練習として、業種別のケースで見ていきます。
判断基準は2つの軸の掛け算
カスハラ対策義務化の全体像で整理したとおり、「社会通念上許容される範囲を超えたかどうか」は、次の2つの軸で判断します。
| 軸 | 範囲を超える例 |
|---|---|
| 言動の内容(要求そのもの) | 要求に理由がない/商品・サービスと関係のない要求/契約で想定する範囲を著しく超える要求/不当な損害賠償要求 |
| 手段・態様(やり方) | 身体的な攻撃/精神的な攻撃(脅迫・中傷・暴言・土下座の強要)/威圧的な言動/継続的・執拗な言動/拘束的な言動(不退去・居座り) |
大事なのは、この2つは足し算ではなく「どちらか一方でも著しく超えていれば」カスハラに当たり得るという点です。要求内容は理由があっても、伝え方が威圧的であればカスハラになりますし、逆に伝え方は穏やかでも、要求そのものに理由がなければカスハラになります。
業種別ケーススタディ
2つの軸を、実際に起こりやすい場面に当てはめてみます。あくまで判断の練習用の例であり、実際の事案は状況の総合考慮で判断してください。
現場でその場に判断する3ステップ
- 要求の内容に理由があるか、契約・商品・サービスと関係があるかを確認する
- 伝え方に威圧・拘束・執拗さなど手段・態様の問題がないかを確認する
- いずれかに当てはまる、または判断に迷う場合は、その場で結論を出そうとせず、あらかじめ定めたエスカレーション基準に沿って上長に引き継ぐ
現場の担当者に「その場で正しく判定する」ことまで求めるのは負担が大きすぎます。むしろ大切なのは、迷った時点で一人で抱え込まず引き継ぐ基準を先に決めておくことです。エスカレーション基準や対応手順書の組み立て方は、対応マニュアル・基本方針の作り方で扱っています。
よくある質問
クレームとカスハラはどこで線引きしますか?
要求に理由があるかという言動の内容と、やり方が相当かという手段・態様の2軸で判断します。どちらか一方でも社会通念上許容される範囲を超え、就業環境が害されればカスハラに当たります。
要求内容は正当でも、大声や高圧的な態度ならカスハラになりますか?
なり得ます。要求内容に理由があっても、威圧的な言動・継続的な言動・拘束的な言動は手段・態様の面で範囲を超えると判断される代表例です。
取引先の担当者からの言動もカスハラの対象になりますか?
なります。法律上の「顧客等」には取引の相手方も含まれます。BtoBの取引でも要求内容や伝え方が範囲を超え、就業環境が害される場合はカスハラに当たり得ます。
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(言動の内容・手段態様の例示)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf - 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」(「顧客等」の範囲・取引の相手方を含む定義)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
判断の2軸・例示・「顧客等」の範囲は上記の一次情報にもとづいています。業種別のケース例は、この基準を具体的な場面に当てはめた解説であり、個別の事案の判定を保証するものではありません。
※本ページは一般的な情報提供を目的とした解説です。実際の事案の該当性は、言動の頻度・態様・業務内容など個別の事情の総合考慮で判断されます。最新の正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))にご確認ください。個別の相談対応や書類作成の代行(社会保険労務士業務)は行っていません。