解説ガイド

カスハラ対策の掲示文・例文集
店頭ポスターとWeb告知の書き方

カスタマーハラスメントへの方針を店頭やWebサイトでどう掲示するか。小売・医院・電話窓口・取引先向けの4業態別に、そのまま使える文例と避けるべき表現を整理します。

最終確認日:2026年8月12日(カスハラ対策義務化の全体像で確認済みの一次情報にもとづく)

「カスハラには毅然と対応します」と社内で決めても、それをお客様にどう伝えるかは別の問題です。店頭のポスター、Webサイトの告知、電話の自動音声。伝え方を誤ると、正当なご意見まで萎縮させたり、かえって反発を招いたりします。ここでは、掲示文の基本構造と、業態別にそのまま使える例文、そして書いてはいけない表現までを具体的に示します。

この規定例が自社の就業規則に合うか、このページで聞く(無料・登録不要)

厚生労働省指針が求める措置は10個で、就業規則の条文で足りるのは一部です。自社に足りない措置を確認する(無料・登録不要)

カスハラ対策の義務化(2026年10月1日施行)まで あと少しです。

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なぜ掲示が必要か。義務化の中での位置づけ

カスハラ対策義務化の全体像で整理したとおり、2026年10月1日に施行される改正労働施策総合推進法のもとで、厚生労働省の指針は事業主に10の措置を求めます。その先頭に置かれているのが「カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する方針を明確化して、労働者に周知・啓発する」ことです。

店頭掲示やWebサイトでの告知そのものが条文に書かれているわけではありません。しかし、方針を社外に向けて示すことには、社内文書にはない2つの働きがあります。

つまり掲示は、方針の明確化と周知という措置を、社外にまで延長する代表的な手段です。就業規則やマニュアルが社内向けの文書だとすれば、掲示文はその方針の「お客様向けの顔」に当たります。

掲示文は4つの部品でできている

業態を問わず、伝わる掲示文は次の4つの部品でできています。例文に入る前に、この構造を押さえておくと自社向けの調整がしやすくなります。

部品書く内容役割
1. 方針宣言正当なご意見には誠実に対応すること、従業員を守ることの両方を宣言する敵対宣言ではないことを最初に示す
2. 求める行動(対象行為)どのような言動を許容範囲を超えるものと考えるかを具体的に挙げる「カスハラお断り」だけでは伝わらない対象を明確にする
3. 対応の予告該当する場合に、対応の打ち切り・退店のお願い・警察への通報など、実際にとる対応を予告する現場が実行するときの根拠になる
4. 連絡先ご意見・ご要望を受け付ける正規の窓口を示す正当な申し出の行き先を確保する
4つのうち抜けやすいのは「1. 方針宣言」と「4. 連絡先」です。禁止事項と対応の予告だけを並べた掲示は、正当なご意見を持つお客様にまで身構えさせます。「ご意見は歓迎する。その正規の入口はここにある」と示すことで、掲示は威嚇ではなく案内になります。

業態別・そのまま使える掲示文例4本

以下の4本は、いずれも「方針宣言 → 求める行動 → 対応の予告 → 連絡先」の順で組んであります。社名・連絡先を差し替えれば掲示できますが、対象行為と対応の予告は自社で実際に起きていること・実際にできることに合わせて調整してください。

1. 小売・飲食などの店頭ポスター

掲示文例(店頭・レジ横・入口掲示用)
お客様へのお願い

当店は、お客様に気持ちよくご利用いただける店づくりと、従業員が安心して働ける環境の両立に取り組んでいます。商品やサービスへのご意見・ご要望には誠実に対応いたします。

一方で、大声での叱責や暴言、土下座の要求、長時間にわたる居座りや電話、従業員個人への攻撃や無断撮影など、社会通念上相当な範囲を超える言動があった場合には、お申し出への対応を打ち切り、ご退店をお願いすることがあります。暴力や脅迫に対しては、警察へ通報いたします。

ご意見・ご要望は下記にて承ります。
店舗責任者または お客様相談窓口:0XX-XXXX-XXXX(受付時間 10:00〜17:00)

店頭掲示は読まれる時間が数秒です。対象行為の列挙は自店で実際に起きたことのある類型に絞り、文字を減らすほど読まれます。

2. 医院・クリニックの院内掲示

掲示文例(受付・待合室掲示用)
当院を受診される皆様へ

当院は、すべての患者様に安全で適切な医療を提供するため、職員が安心して業務にあたれる環境の維持に努めています。診療内容へのご質問やご不安には、丁寧にご説明いたします。

一方で、職員への暴言・威嚇、他の患者様のご迷惑となる行為、職員の無断撮影やSNSへの投稿など、許容される範囲を超える言動が続く場合には、以後の診療について院内で対応を検討させていただくことがあります。暴力や脅迫に対しては、警察へ通報いたします。

ご意見は受付または下記までお寄せください。
医療法人◯◯会 事務長:0XX-XXXX-XXXX

医療機関には応召義務との関係があるため、「診療をお断りします」と断定的に書くのは避け、上の例のように対応の検討を予告する形にとどめています。実際に診療を断れるのは、診療の基礎となる信頼関係が失われた場合などに限られます。個別の判断基準は院内の対応マニュアル側に定めておきます。

3. 電話窓口の自動音声・Webサイト告知

文例(コールセンター・電話窓口の冒頭自動音声用)
この通話は、応対品質の向上とお申し出内容の正確な把握のため、録音しております。オペレーターへの暴言や、社会通念上相当な範囲を超えるお申し出があった場合には、通話を終了させていただくことがあります。
文例(Webサイト「カスタマーハラスメントに対する方針」ページ用)
カスタマーハラスメントに対する当社の方針

当社は、お客様からの正当なご指摘・ご要望に誠実に対応するとともに、従業員が安心して働ける環境を守ることを経営上の責務と考えています。

お客様の言動のうち、暴言・脅迫・土下座の要求、長時間または繰り返しの電話・居座り、従業員個人への攻撃、SNS等での誹謗中傷など、社会通念上相当な範囲を超えるものをカスタマーハラスメントと位置づけ、該当する場合には、対応の打ち切り、以後のお取引やサービス提供のお断り、警察・弁護士への相談を含む措置をとります。

ご意見・ご要望は、お問い合わせフォームまたはお客様相談窓口(0XX-XXXX-XXXX)にて承ります。

自動音声は1文が長いと聞き取れません。録音の告知と対応の予告の2文に絞るのが実務的です。Webサイトの方針ページは分量の制約がないため、4つの部品をすべて備えた完全版を置き、店頭掲示やSNSプロフィールからリンクする使い方ができます。

4. BtoB・取引先向けの通知文書

文例(取引先向け・書面またはメール通知用)
お取引先様各位

カスタマーハラスメントへの対応方針について

平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
当社は、従業員が安心して業務に従事できる環境を確保するため、カスタマーハラスメントへの対応方針を定めましたので、お知らせいたします。

当社は、お取引先様からの正当なご指摘・ご要望には今後も誠実に対応してまいります。一方で、当社従業員に対する暴言・威圧的な言動、人格を否定する発言、業務上の必要性を欠く過大な要求や長時間の拘束などが行われた場合には、担当者の交代、対応窓口の一本化、お取引条件の見直しを含む対応を検討させていただきます。

本方針は、双方の従業員が健全な環境で業務にあたるためのものであり、貴社との良好なお取引関係を今後も継続していくことを目的としております。

本方針に関するお問い合わせ:株式会社◯◯ 総務部 電話 0XX-XXXX-XXXX

2026年10月1日施行の義務化では、顧客だけでなく取引先等からの著しい迷惑行為も対象に含まれます。BtoB企業では店頭掲示の代わりに、この形の通知文書やWebサイトの方針ページが周知手段になります。取引継続への意思を明記すると、関係悪化の懸念を抑えられます。

掲示だけでは義務を満たせない

掲示文は10の措置のうち、方針の明確化と周知に関わる1つの手段にすぎません。掲示を出した瞬間から、掲示に書いた対応を現場が実行できる体制が問われます。最低限、次の3点との接続を確認してください。

また、どこからがカスハラでどこまでが正当なクレームかの線引きを現場が共有していないと、掲示の対象行為を広く解釈しすぎる事故が起きます。判断基準はカスハラとクレームの線引きを参照してください。

足りない措置の書式は、Wordで渡せます

就業規則の改定条文3パターンと、窓口・事実確認・研修などの書式10点です。中身を見てから判断できます。

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書いてはいけない表現

掲示文で自社を守るつもりが、かえって火種になる表現があります。次の3類型は避けてください。

避ける表現理由
挑発的・敵対的な文言「お客様は神様ではありません」「非常識なお客様お断り」SNSで切り取られて拡散しやすく、正当なご意見を持つお客様まで遠ざけます。掲示の目的は従業員の保護であって、お客様への意趣返しではありません
法的根拠のない罰則の予告「迷惑行為には罰金を申し受けます」「即刻、威力業務妨害罪で刑事告訴します」会社に刑罰を科す権限はなく、実行できない予告は方針全体の信頼を損ないます。書けるのは対応の打ち切り・退店のお願い・警察への通報など、実際にとり得る対応だけです
対象の不明な全面禁止「カスハラは一切お断り」のみで対象行為の記載がない何が該当するのか伝わらず、抑止としても現場の根拠としても機能しません。対象行為の具体例が掲示文の中心です

迷ったときの基準は1つです。その一文を、目の前の普通のお客様が読んだときに、歓迎されていると感じるか。感じないなら書き直しの対象です。

掲示はいつから始めるか

施行日は2026年10月1日ですが、掲示をこの日まで待つ理由はありません。義務化は「この日から対策を始めてよい」ではなく「この日までに体制を整えておく」という期限です。カスハラそのものは施行日と関係なく毎日起きているため、方針が固まり次第、掲示は先に始めることをおすすめします。

順番としては、基本方針の決定、就業規則・マニュアルとの整合の確認、従業員への説明、そして掲示の開始、という流れが安全です。従業員への説明より先に掲示だけを出すと、お客様から掲示について質問された現場が答えられません。掲示の開始日を決めたら、朝礼やミーティングで「この掲示が出ます。書いてある対応はこの手順で実行します」と共有してから貼り出してください。

自社の業種・体制に合わせて方針の文言を相談する
「うちの業種だとどんな文言にすればいいか」「対応手順の順番はこれで合っているか」など、自社の状況をふまえて整理したいときは、ハラスメント対応AIに無料で相談できます。
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よくある質問

カスハラ対策の掲示は法律上の義務ですか?

店頭掲示そのものが義務として定められているわけではありません。義務の中心は、カスハラに毅然と対応し労働者を保護する方針を明確化して労働者に周知することです。掲示やWebサイトでの告知は、その方針を社外にも示す代表的な手段で、現場の従業員が方針にもとづいて対応するときの後ろ盾になります。

掲示は2026年10月1日より前に始めてもよいですか?

問題ありません。施行日の2026年10月1日は義務化が始まる日であって、それまで対策をしてはいけないという意味ではありません。カスハラは施行日を待たずに起きるため、方針が固まり次第すぐに掲示を始めることをおすすめします。

掲示文に「警察に通報します」と書いてもよいですか?

暴力・脅迫・居座りなど犯罪に当たり得る行為への通報は、実際にとり得る正当な対応なので予告して構いません。一方で、罰金を科すなど会社に権限のない罰則の予告は書いてはいけません。掲示に書く対応の予告は、実際に実行できるものに限るのが原則です。

自社の就業規則ファイルを置くと、カスハラ条文の有無など書いてあることと書いてないことが1枚になります。就業規則のファイルを置く(無料)

出典(一次情報・いずれも2026年8月12日に確認)
  1. 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(方針の明確化・周知の内容)(PDF)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf
  2. 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
  3. e-Gov法令検索「労働施策総合推進法」(改正後33条・措置義務の根拠条文)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132

義務化の施行日・措置義務の内容は上記の一次情報にもとづいています。掲示文例は、これらの内容を店頭・Web等での告知に落とし込む際の実務上の整理であり、厚生労働省が公表した公式ひな形ではありません。

※本ページでは制度の一般的な仕組みをまとめています。掲示文の具体的な文言は、業種・組織体制・想定するリスクによって調整が必要です。最新の正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))にご確認ください。個別の相談対応や書類作成の代行(社会保険労務士業務)は行っていません。

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