最終確認日:2026年7月9日(カスハラ対策義務化の全体像で確認済みの一次情報にもとづく)
方針や窓口を整えていても、実際に電話が鳴った瞬間や、店頭で対応が始まった瞬間に、次に何をすればいいか分からなければ現場は止まってしまいます。ここでは、指針が定める事後対応の措置(事実確認・被害者への配慮・再発防止・悪質事案への対処)を、発生直後からの時系列フローとして整理します。
発生直後(対応開始〜数分以内)
カスタマーハラスメントに当たり得る言動が始まったら、まず次の2つを同時に進めます。
- 対応者を一人にしない:可能であれば近くの従業員が気づいた時点で加わるか、電話であれば取り次ぐ形で複数人が状況を把握できるようにします
- 記録を始める:日時、相手が名乗った場合は氏名・会社名、要求内容、言動の内容を、その場でメモに残します
エスカレーション(数分〜対応中)
次の状態が確認できた時点で、担当者の判断だけで抱え込まず、管理監督者や相談窓口に引き継ぎます。
- 大声・威圧的な言動が続いている
- 同じ要求が繰り返され、話が進まない
- 担当者個人への攻撃的な発言が始まっている
- 金銭要求や土下座の強要など、正当な範囲を明らかに超える要求が出ている
エスカレーション先は、あらかじめ対応手順書に明記しておく必要があります。専任の担当部署がない会社での窓口の作り方は、別記事で兼務体制のパターンとして整理しています。
記録の取り方(対応中〜対応直後)
指針が求める「事実関係の迅速かつ正確な確認」(措置⑤)のために、対応後できるだけ早く次の項目を記録に残します。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 開始時刻・終了時刻 |
| 対応者 | 最初に対応した従業員、途中から加わった従業員 |
| 相手の情報 | 氏名・会社名など名乗った内容(不明な場合は不明と記載) |
| 要求・言動の内容 | 何を求められたか、どのような言葉を使われたか(可能な限り原文に近い形で) |
| 対応の経過 | 誰が何を伝え、相手がどう反応したか |
| エスカレーションの有無 | 誰にいつ引き継いだか |
通話であれば、証拠保全の目的で会社として録音する運用も一般的です。録音を行う場合は、対応手順書に録音を行う場合がある旨をあらかじめ定めて周知しておくと、現場の判断がぶれません。
警察への通報の判断基準
次のような言動が生じた場合は、警察への通報を検討する場面です。
- 身体的な攻撃(殴る・物を投げるなど)
- 脅迫的な言動(危害を加える旨をほのめかす発言など)
- 拘束的な言動(居座り・不退去、従業員を長時間解放しないなど)
その場で通報すべきか判断に迷う場合は、まず警察に相談する形で状況を伝え、対応の助言を受けることもできます。通報の判断基準は、対応手順書に具体例として明記し、現場の従業員が「これは通報していい場面だ」と迷わず動けるようにしておくことが重要です。
従業員への配慮(対応後)
指針は、被害を受けた労働者への配慮の措置(措置⑥)を求めています。対応が終わった後、次のような対応を検討します。
- 該当の顧客等への以後の対応を、当該従業員に単独で担当させない
- 必要に応じて配置転換や担当替えを行う
- 心身の状態を確認し、必要であれば産業医面談や相談窓口の利用を案内する
- 対応した従業員を責めるのではなく、組織として対応したことを伝える
再発防止と悪質事案への対処(事後〜継続)
個別の事案対応が終わった後も、指針は再発防止の措置(措置⑦)と、特に悪質な事案への対処方針の整備(措置⑧)を求めています。
- 同様の事案が繰り返されている顧客等については、対応記録を蓄積し、次回以降の対応方針をあらかじめ決めておく
- 悪質と考えられる事案(繰り返しの来店・執拗な要求・犯罪行為に当たり得る言動が続く場合など)には、出入りの謝絶や、必要に応じて被害届の提出など、通常の対応とは異なる方針をあらかじめ定めておく
- 定めた方針は、実際に悪質事案が起きた際に実行できる体制(誰が判断し、誰が動くか)とセットで整備しておく
初動フロー早見表
| タイミング | やること |
|---|---|
| 発生直後 | 一人で対応させない/記録を始める |
| 対応中 | エスカレーション基準に該当したら管理監督者に引き継ぐ |
| 対応中〜直後 | 身体的攻撃・脅迫・拘束的言動があれば警察へ通報を検討 |
| 対応直後 | 記録を書面に残す(録音があれば保存) |
| 事後 | 当該従業員への配慮(担当替え・相談窓口の案内) |
| 継続 | 記録の蓄積と再発防止・悪質事案への対処方針の実行 |
よくある質問
カスハラが起きたら、まず何をすればよいですか?
対応している従業員を一人にせず、可能であれば他の従業員が加わるか対応を交代します。並行していつ・誰が・何を言われたかという記録を残し始め、判断が難しい言動であればエスカレーション基準に沿って管理監督者に引き継ぎます。
通話を録音してもよいですか?
業務として対応している通話を、証拠保全の目的で会社として録音すること自体は、一般的に業務上の記録として位置づけられます。対応手順書に録音を行う場合がある旨を定めて周知しておくと運用上の位置づけが明確になります。個別の判断は専門家に確認してください。
どんな言動があれば警察に通報してよいですか?
身体的な攻撃、脅迫的な言動、拘束的な言動(不退去・居座り)など、犯罪に当たり得る言動が生じた場合が目安です。判断に迷う場面では、まず警察に相談する形で状況を伝えることもできます。
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(措置⑤⑥⑦⑧の内容)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf - 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html - e-Gov法令検索「労働施策総合推進法」(改正後33条・措置義務の根拠条文)
https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
措置⑤〜⑧の内容・条文根拠は上記の一次情報にもとづいています。時系列フローや記録項目の整理は、これらの内容を現場の対応手順に落とし込む際の実務上の整理であり、厚生労働省が公表した公式ひな形ではありません。個別事案での録音・通報の可否は、専門家に確認してください。
※本ページは一般的な情報提供を目的とした解説です。個別の事案への対応は、状況によって判断が異なります。最新の正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))・警察にご確認ください。当サイトは社会保険労務士による個別の相談・書類作成代行を提供するものではありません。