🧭 解説ガイド

カスハラ対応マニュアル・
基本方針の作り方

2026年10月の義務化に向けて何から手を付ければよいか。基本方針と対応手順書の章立て・文例の骨子を、厚生労働省の指針にもとづいて整理します。

最終確認日:2026年7月9日(カスハラ対策義務化の全体像で確認済みの一次情報にもとづく)

「方針を明確にして周知する」と指針に書いてあっても、実際に何をどんな順番で書けばいいのかは意外とわかりません。ここでは、措置義務のうち文書化が必要な部分を、基本方針と対応手順書という2つの文書に分けて、章立てと文例の骨子まで具体的に示します。

まず、何を作れば義務を満たすことになるか

カスハラ対策義務化の全体像で整理したとおり、厚生労働省の指針が求める10の措置のうち、文書化と直接関わるのは次の2つです。

①は会社の姿勢を示す短い文書、②は実際に起きたときの動き方を示す実務文書と考えると、作るものが2つに分かれることが見えてきます。この記事では①を「基本方針」、②を「対応手順書」と呼んで、それぞれの中身を組み立てていきます。

基本方針は1枚にまとめる

基本方針は、長く書くほど良いものではありません。全従業員が一度読んで趣旨をつかめる分量に収め、次の章立てで組み立てると過不足がなくなります。

盛り込む内容
1. 目的顧客等からの著しい迷惑行為から従業員を守り、安心して働ける環境を維持することが目的である旨
2. 定義カスタマーハラスメントの3要素(顧客等の言動/社会通念上許容される範囲を超える/就業環境が害される)を簡潔に記載
3. 会社の基本姿勢正当な指摘・要望には誠実に対応する一方、範囲を超えた言動には組織として毅然と対応する旨
4. 適用範囲雇用形態を問わず全従業員に適用される旨(正社員・パート・アルバイト・派遣を含む)
5. 施行日・周知方法いつから適用するか、どう周知したかを記載し、周知の記録を残す起点にする
文例の骨子(そのまま使わず、自社の実情に合わせて肉付けしてください)
当社は、お客様からの正当なご指摘・ご要望には誠実に対応します。一方で、社会通念上許容される範囲を超える言動により従業員の就業環境が害される場合は、組織として毅然とした対応を行い、従業員を保護します。本方針は雇用形態を問わず全従業員に適用します。

対応手順書は5つの場面に分けて書く

対応手順書は、方針とは逆に、細かく場面分けするほど現場で使えるものになります。次の5つの場面を軸に組み立てます。

  1. 初期対応:電話・対面それぞれで、まず何を伝え、どう記録するか(一人で長時間対応させない、というルールをここに明記します)
  2. エスカレーション基準:どの段階で管理監督者に引き継ぐか(大声・威圧的な言動が始まった時点、特定の要求が繰り返された時点、など具体的な基準)
  3. 記録の取り方:いつ・誰が・何を記録するか(日時、要求内容、対応者、その場の状況を残す様式)
  4. 警察への通報基準:身体的な攻撃、脅迫、拘束的な言動(不退去・居座り)など、犯罪に当たり得る言動が生じた場合の通報の目安
  5. 本社・本部への情報共有:店舗や拠点で対応しきれない事案を、いつ・どのルートで本社に上げるか
対応手順書は「誰が読んでもすぐ動ける」ことが目的です。方針のように理念を書く場所ではなく、電話が鳴った瞬間に何をすればよいかが分かる形にします。フローチャートや一覧表にまとめると現場で実際に使われやすくなります。

周知は「配って終わり」にしない

指針が求めているのは方針・手順を作ることだけでなく、労働者に周知することまでです。周知の実務は次のような形が現実的です。

相談窓口の設置・プライバシー保護・相談を理由とした不利益取扱いの禁止(措置③④⑨⑩)も、基本方針や対応手順書に一文ずつ入れておくと、後から窓口を整備したときに文書間の食い違いが起きません。窓口そのものの作り方は別の機会に扱います。

就業規則との関係

基本方針・対応手順書は現場向けの実務文書で、就業規則は労働条件を定める規程です。役割が異なるため、就業規則に規定を置く場合でも、現場が日常的に参照するのは基本方針・対応手順書のほうになります。文書化の形式を整える際は、就業規則ひな形(無料ダウンロード)とあわせて、条文の表現と基本方針の言い回しがずれないか確認しておくと、規程と現場文書の間で解釈の食い違いが起きにくくなります。

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よくある質問

カスハラ対応マニュアルは何を書けば義務を満たしますか?

指針が求めているのは、方針の明確化と周知(措置①②)です。基本方針で会社の姿勢と定義を示し、対応手順書で実際の対処の流れを示す、という2つの文書に分けて作ると整理しやすくなります。

基本方針と対応手順書は別の文書にする必要がありますか?

必ず分ける必要はありませんが、基本方針は1枚程度の姿勢表明、対応手順書は現場の実務文書として分けたほうが、それぞれの目的がはっきりし、周知や見直しがしやすくなります。

就業規則に書けばマニュアルは不要になりますか?

就業規則に規定を置くことは有効ですが、就業規則は条文形式が中心で現場がすぐ動けるものではありません。就業規則の規定と、現場向けの基本方針・対応手順書は役割が異なるため、両方を整えるのが実務的です。

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措置義務に対応する社内整備の全体手順は、カスハラ措置義務の社内対応の解説にまとめています。
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出典(一次情報・いずれも2026年7月8日〜9日に確認)
  1. 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(措置①②の内容)(PDF)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf
  2. 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
  3. e-Gov法令検索「労働施策総合推進法」(改正後33条・措置義務の根拠条文)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132

措置①②の内容・条文根拠は上記の一次情報にもとづいています。章立て・文例の骨子は、これらの内容を自社文書に落とし込む際の実務上の整理であり、厚生労働省が公表した公式ひな形ではありません。

※本ページでは制度の一般的な仕組みをまとめています。文書の具体的な文言は、業種・組織体制・想定するリスクによって調整が必要です。最新の正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))にご確認ください。個別の相談対応や書類作成の代行(社会保険労務士業務)は行っていません。