🧭 解説ガイド

就業規則・社内規程への
カスハラ対応の書き方

既存のハラスメント禁止規定はセクハラ・パワハラが中心で、カスタマーハラスメントには触れていないことがほとんどです。何を書き加えればよいか、規定例とともに整理します。

最終確認日:2026年7月9日(カスハラ対策義務化の全体像で確認済みの一次情報にもとづく)

就業規則には「ハラスメントの禁止」という条文がすでにある会社が多いはずです。ただし、その条文が想定しているのは多くの場合、社員同士や上司部下の間のセクシュアルハラスメント・パワーハラスメントであり、顧客等の第三者から従業員への迷惑行為であるカスタマーハラスメントは対象外になっています。ここでは、既存条文との違いを整理したうえで、追加すべき条文を規定例として示します。

既存の「ハラスメント禁止」規定では足りない理由

一般的な就業規則のハラスメント禁止条文は、次のような書き方になっていることが多く見られます。

既存条文の一般的な書き方(例)
性的な言動による嫌がらせ(セクシュアルハラスメント)、職場での優越的な関係を背景とした言動による嫌がらせ(パワーハラスメント)、妊娠・出産・育児・介護に関する言動による嫌がらせ(マタニティハラスメント等)その他のハラスメントは、これを行ってはなりません。

この条文が禁止しているのは、従業員自身が加害者にならないことです。一方でカスタマーハラスメント対策義務化が求めているのは、顧客等の第三者から従業員への迷惑行為に対して、会社が従業員を保護する体制を作ることです。禁止する対象と保護する対象が逆になっているため、既存条文をそのまま流用することはできず、別の条文を追加する必要があります。

カスハラ対応条文の規定例

厚生労働省の指針が求める措置の内容を、就業規則の条文として落とし込むと、次のような構成になります。実際の運用にあたっては、自社の相談窓口・エスカレーション先の名称に置き換えてください。

第◯条(顧客等からの著しい迷惑行為への対応)
1. 会社は、顧客、取引先その他の関係者(以下「顧客等」という)の言動であって、社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害するもの(以下「カスタマーハラスメント」という)から、従業員を保護するため、必要な措置を講ずる。
2. 従業員は、業務中にカスタマーハラスメントを受けた場合、速やかに所属長または相談窓口に報告するものとする。
3. 会社は、前項の報告を受けたときは、事実関係を確認のうえ、従業員を一人で対応させない、必要に応じて対応者を交代させる、犯罪に該当し得る言動については警察への通報を検討するなど、状況に応じた措置を講ずる。
4. 会社は、相談したこと又は事実確認に協力したことを理由として、当該従業員に対し解雇その他不利益な取扱いを行わない。
上記は条文の骨子です。相談窓口の名称、エスカレーション先、警察通報の判断基準の詳細まで書き込むと条文が長くなりすぎるため、詳細はハラスメント防止規程などの別規程や対応手順書に委任し、就業規則本体では会社の基本姿勢と保護の枠組みを定めるにとどめる書き方が実務的です。

別規程に委任する場合の書き方

条文の分量を抑えたい場合は、就業規則本体に次のような委任条文を置き、相談窓口・対応フローの詳細は別規程に定める形も選べます。

委任条文の例
顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)への対応に関する具体的な相談窓口、対応手順その他必要な事項は、別に定めるハラスメント防止規程による。

この場合、対応手順書や相談窓口の運用の詳細を別規程・別文書として整備しておく必要があります。方針・対応手順書そのものの作り方は、別記事で章立てと文例の骨子を整理しています。

就業規則の変更手続き

就業規則に新しい条文を追加する変更は、労働条件の不利益変更にはあたらないため、通常の就業規則変更の手続き(従業員代表からの意見聴取、所轄労働基準監督署への届出、従業員への周知)で対応できます。既存の就業規則がある会社であれば、本条文を追加したうえで、変更後の全文を周知し直すことになります。

就業規則ひな形との違い

当サイトが公開している就業規則ひな形(無料ダウンロード)には、一般的なハラスメント禁止条文(第11条)が含まれていますが、上記のカスタマーハラスメント対応条文は含まれていません。ひな形を利用する場合は、本記事の規定例を参考に、第11条とは別の条文として追加してください。

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よくある質問

就業規則にカスハラの条文を書くことは義務ですか?

就業規則への記載そのものが法律上の義務というわけではありません。義務の内容は、方針の明確化・周知や相談窓口の設置といった措置を講じることです。ただし、条文として明記しておくと、会社の方針が労働契約上の位置づけを持ちます。

すでにハラスメント禁止の条文があれば、カスハラ条文は不要ですか?

既存の条文は多くの場合セクハラ・パワハラなど労働者間の言動を対象にしています。カスタマーハラスメントは顧客等の第三者が主体となる点で異なるため、別の条文を追加するのが実務的です。

カスハラの規定は就業規則本体と別規程のどちらに書くべきですか?

どちらでも構いません。条文数が少なければ本体に追加し、運用の詳細まで定める場合は別規程に委任する形にすると、本体の分量を抑えつつ実務の詳細を残せます。

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措置義務に対応する社内整備の全体手順は、カスハラ措置義務の社内対応の解説にまとめています。
出典(一次情報・いずれも2026年7月8日〜9日に確認)
  1. 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(措置①〜⑩の内容)(PDF)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf
  2. 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
  3. e-Gov法令検索「労働施策総合推進法」(改正後33条・措置義務の根拠条文)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132

措置義務の内容・条文根拠は上記の一次情報にもとづいています。規定例は、これらの内容を自社の就業規則に落とし込む際の実務上の整理であり、厚生労働省が公表した公式ひな形ではありません。実際の条文は、専門家に確認のうえ自社の実情に合わせて調整してください。

※本記事は一般的な情報提供のための解説です。就業規則の変更手続き・条文の具体的な文言は、業種・組織体制によって調整が必要です。最新の正確な情報は、厚生労働省・都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))にご確認ください。当サイトは社会保険労務士による個別相談や書類作成の代行を行うものではありません。