🧭 解説ガイド

従業員から「社保に入りたくない」
と言われたら

106万円の壁(賃金要件)撤廃で加入対象になるパート従業員から、加入を拒む声が出ることがあります。会社としてどう説明すればよいかを整理します。

最終確認日:2026年7月9日(保険料率は協会けんぽ・日本年金機構の一次情報で確認)

会社側の対応手順で触れたとおり、社会保険への加入は法律上の義務であり、従業員本人の希望による選択制ではありません。とはいえ「そう言われても納得できない」という従業員は必ず出てきます。ここでは、なぜ拒否したくなるのか、どう説明すれば納得を得やすいのか、実際の話し方まで踏み込んで整理します。

まず伝える前提:加入は選択できない

要件に該当する従業員について、会社が本人の希望で加入手続きを見送ることはできません。この前提を曖昧にしたまま話を始めると、後から「やっぱり加入してください」と伝え直すことになり、かえって不信感につながります。最初の説明で、次の2点をはっきり伝えておきます。

なぜ「入りたくない」と言われるのか

拒否の理由の多くは、加入によって毎月の手取りが下がることへの不安です。会社側の対応手順で示した保険料の目安のとおり、月額賃金9万円程度の従業員であれば、本人負担分も会社負担分とおおむね同水準になり、月あたり1万2千円台の保険料が給与から控除されます。これが「そのままの手取りでいたい」という気持ちにつながります。

説明で伝えるべき3つのポイント

手取りの減少という不安に対しては、次の3点をセットで伝えると納得を得やすくなります。

  1. 加入は法律上の義務であり、会社にも従業員にも選べる余地がないこと
  2. 保険料を払う分、将来受け取る年金額が増えること、また傷病手当金・出産手当金など、加入していないと受け取れない給付の対象になること
  3. 労働時間を少し増やせば、保険料負担分を吸収して手取りを元の水準に近づけられること(手取り回復ラインの考え方)

手取り回復ラインの示し方

加入によって手取りがどれくらい下がり、どのくらい働けば元の手取り水準に戻るのかを、具体的な数字で示すと納得を得やすくなります。会社側の対応手順で示した保険料の目安をもとに、月額賃金別の考え方を整理すると次のようになります。

月額賃金本人負担の保険料目安(40歳未満・折半分)手取り回復の考え方
88,000円約12,400円手取りの下がり幅を賃金の増加でどこまで吸収できるかは、時給・勤務日数の増やし方によって変わります
100,000円約14,100円同上
120,000円約16,900円同上
賃金をどれだけ増やせば保険料負担分を吸収できるかは、時給・勤務日数・扶養控除の状況によって従業員ごとに異なります。一律の目安を示すよりも、対象者ごとに給与明細の見込み額で個別に確認するほうが、納得感のある説明になります。個別の試算は、社会保険シミュAIに条件を伝えて確認する方法もあります。

説明のタイミングと進め方

個別説明は、加入手続きの直前ではなく、余裕を持った時期に行います。伝える順番は次のとおりです。

  1. 加入が義務であり選択制でないことを最初に明確に伝える
  2. 手取りがどの程度下がるかを、本人の賃金水準にもとづいて具体的に示す
  3. 将来の年金額の増加、傷病手当金・出産手当金といった保障の拡大を説明する
  4. 労働時間を調整したい意向があれば、手取り回復ラインの考え方を一緒に確認する
  5. 説明した内容と本人の反応を記録に残す

会社としてやってはいけないこと

従業員から拒否されたときに、次のような対応は避ける必要があります。

これらは実態と異なる労務管理につながり、後日の調査で是正の対象になり得ます。加入を望まない従業員がいても、会社は実際の労働時間・賃金の実態にもとづいて要件への該当を判断する必要があります。

それでも納得が得られない場合

説明を尽くしても本人が納得しない場合でも、要件に該当する以上、会社は加入手続きを進める必要があります。本人の意向は、勤務日数・時間の調整といった働き方の相談として引き続き受け止めつつ、加入手続き自体は法律上の義務として淡々と進める、という姿勢を崩さないことが大切です。

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よくある質問

従業員が社会保険への加入を拒否した場合、会社は加入させなくてよいですか?

できません。要件を満たす従業員について、本人の希望を理由に加入手続きを見送ることはできません。社会保険への加入は法律上の義務であり、会社は該当者について資格取得の手続きを行う必要があります。

手取りが下がる不安にはどう説明すればよいですか?

保険料が控除される分だけ手取りが下がる一方で、将来の年金額の増加や、傷病手当金・出産手当金といった給付の対象になることをあわせて伝えます。労働時間を少し増やせば保険料負担分を吸収して手取りを元の水準に近づけられるという考え方も、具体的な金額で確認すると納得を得やすくなります。

労働時間をあえて増やさず加入対象から外すことはできますか?

要件に該当する働き方をしているにもかかわらず、意図的に労働時間を短縮させて加入を免れさせる運用は、実態と異なる契約内容を作り出すことになり、適切ではありません。会社は実際の労働時間・賃金の実態にもとづいて要件への該当を判断する必要があります。

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106万円の壁を迎える従業員への会社側の対応手順は、106万円の壁の社内対応の解説にまとめています。
出典(一次情報・いずれも2026年7月9日に確認)
  1. 全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」(健康保険料率・適用時期)
    https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/
  2. 日本年金機構「厚生年金保険料額表」(厚生年金保険料率18.3%)
    https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/index.html
  3. 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(加入要件・撤廃スケジュール)
    https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html

本文中の保険料率・本人負担の目安は、上記の一次情報にもとづく概算であり、会社側の対応手順で示した会社負担分と同水準で試算しています。実際の保険料は標準報酬月額の等級および都道府県・組合ごとの料率によって異なります。

※本ページでは制度の一般的な仕組みをまとめています。個別の説明内容・手取りの試算は、従業員ごとの賃金・扶養状況によって異なります。最新の正確な情報は、日本年金機構・加入する健康保険組合・年金事務所にご確認ください。当サイトは社会保険労務士による個別の相談・書類作成代行を提供するものではありません。