最終確認日:2026年7月9日(本文中の法律番号・日付・数値をすべて一次情報で確認)
「106万円の壁が撤廃される」というニュースを見て、パートで働く人も、パートを雇う会社も、何がどう変わるのか気になっているはずです。先に整理すると、なくなるのは106万円の壁を作っていた要件のうち賃金の条件だけで、週の労働時間や学生かどうかの条件は残ります。撤廃の根拠と時期を、条文と一次情報にもとづいて追っていきます。
106万円の壁は「1つの要件」の名前だった
そもそも106万円の壁とは、法律上の1つの制度の名前ではありません。短時間労働者が勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するために満たす必要がある、次の5つの要件のうち、賃金に関する要件のことを指す通称です。
| # | 加入要件 | 2026年10月以降(予定) |
|---|---|---|
| ① | 週の所定労働時間が20時間以上であること | 残る |
| ② | 所定内賃金が月額8.8万円以上であること(=106万円の壁の本体) | 撤廃予定 |
| ③ | 継続して2か月を超えて使用される見込みがあること | 残る |
| ④ | 勤務先が特定適用事業所(厚生年金の被保険者数51人以上)であること | 残る(段階的に対象拡大。後述) |
| ⑤ | 学生でないこと | 残る |
「106万円の壁が撤廃される」という言い方は、この5要件のうち②だけがなくなることを指しています。①③④⑤は撤廃後も存在し続けるため、社会保険に加入するかどうかの判定自体がなくなるわけではありません。
いつから撤廃されるのか
根拠になっているのは、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)です。2025年5月16日に国会へ提出され、2025年6月13日に成立、2025年6月20日に公布されました。
この改正法では、賃金要件(月額8.8万円以上)について、公布から3年以内に、最低賃金の状況を踏まえて撤廃するという枠組みが定められています。厚生労働省の資料では、最低賃金が全国で時給1,016円を超えると、週20時間働けば自動的に賃金要件(月額8.8万円)を満たす計算になるため、この水準を撤廃の目安としてきました。令和7年度の地域別最低賃金改定により、全都道府県で時給1,016円を超えたことから、2026年(令和8年)10月に賃金要件が撤廃される見込みです。
企業規模要件(51人以上)は2026年10月には変わらない
賃金要件と混同しやすいのが、④の企業規模要件です。こちらは2026年10月の時点では変わりません。ただし、これも2027年10月から段階的に縮小され、最終的には企業規模を問わなくなる予定です。
| 時期 | 対象となる企業規模(特定適用事業所) |
|---|---|
| 現在〜2027年9月 | 厚生年金保険の被保険者数51人以上 |
| 2027年(令和9年)10月から | 36人以上 |
| 2029年(令和11年)10月から | 21人以上 |
| 2032年(令和14年)10月から | 11人以上 |
| 2035年(令和17年)10月から | 10人以下の企業も対象(企業規模要件が実質撤廃) |
つまり「106万円の壁の撤廃」と「小さい会社にも社会保険加入が広がること」は、別々のスケジュールで進みます。従業員が50人以下の会社は、2026年10月の段階ではこれまでどおり企業規模要件の対象外ですが、2027年10月以降は対象になる可能性があるため、自社の従業員数の推移を見ておく必要があります。
2025年ルールとの違い
社会保険の壁の基本的な仕組み自体は、2025年時点のルールから大きく変わりません。変わるのは、5要件のうち賃金要件がなくなる点と、企業規模要件が数年かけて縮小していく点の2つです。2025年時点の106万円・130万円の壁や税金の壁(103万円・123万円など)の全体像は、当サイトの106万・130万の壁の解説ガイドで整理しています。あわせて読むと、何が変わらず何が変わるのかを分けて理解しやすくなります。
130万円の壁は今回の改正と関係ない
106万円の壁と130万円の壁は、どちらも社会保険の壁ですが役割が異なります。106万円の壁は自分の勤務先で加入する基準、130万円の壁は家族の扶養から外れるかどうかの基準です。今回撤廃されるのは106万円の壁を作っていた賃金要件で、130万円の壁(被扶養者認定の基準)は今回の年金制度改正法の対象ではなく、そのまま残ります。この2つを同じ話として扱うと、扶養の判断を誤ることがあるため注意が必要です。
よくある質問
106万円の壁はいつ撤廃されますか?
賃金要件(月額8.8万円以上)が2026年(令和8年)10月に撤廃される予定です。令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)にもとづき、公布から3年以内に最低賃金の状況を踏まえて撤廃するとされ、全都道府県の最低賃金が時給1,016円を超えたことから2026年10月が見込まれています。確認日時点でこれは予定であり、確定した施行期日は続報の確認が必要です。
106万円の壁が撤廃されると、パートは全員社会保険に入ることになりますか?
なりません。週の所定労働時間が20時間以上であること、学生でないことなどの要件は残ります。週20時間未満で働く人は、賃金要件の撤廃後も引き続き加入対象になりません。
従業員が少ない会社は関係ありませんか?
2026年10月時点では企業規模要件(51人以上)は変わりません。ただし2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へと段階的に縮小され、2035年10月には10人以下の企業も対象になる予定です。
130万円の壁もなくなりますか?
なりません。130万円の壁は家族の扶養から外れるかどうかの基準で、今回の年金制度改正法の対象ではありません。106万円の壁とは別の制度として、分けて考える必要があります。
- 参議院「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」議案情報(法律番号・成立日・公布日)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217080217059.htm - 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html - 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」(賃金要件撤廃の条件・企業規模要件の段階的縮小スケジュール)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html - 厚生労働省「『年収の壁』への対応」(賃金要件撤廃の枠組み・最低賃金1,016円の考え方)
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html - 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(5要件・撤廃スケジュール)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
本文中の法律番号・日付・撤廃スケジュールの記述は、上記の一次情報にもとづいています。「予定」と記載した項目は、確認日時点で確定していない事項です。
短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件は、健康保険法や厚生年金保険法などに定められています。賃金要件の撤廃と企業規模要件の段階的縮小は、2025年6月に成立・公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)によるものです。健康保険法の条文はe-Gov法令検索で確認できます。
e-Gov法令検索:健康保険法 →
※本ページでは制度の一般的な仕組みをまとめています。制度の詳細や個別の事業所への当てはめは、施行に向けた続報や個別の事情によって変わることがあります。最新の正確な情報は、厚生労働省・日本年金機構・年金事務所にご確認ください。個別の相談対応や書類作成の代行(社会保険労務士業務)は行っていません。