🧭 解説ガイド

社会保険の適用拡大
2027年10月から企業規模要件が段階撤廃

短時間労働者を社会保険に加入させる適用拡大で、企業規模要件(特定適用事業所の51人以上)が2027年10月から段階的に引き下げられ、最終的に撤廃されます。いつ、どの規模の会社から対象になるのか、何を準備すればよいのかを、厚生労働省の資料にもとづいて整理します。

短時間労働者を社会保険に加入させる適用拡大で、企業規模要件(特定適用事業所の51人以上)が2027年10月から段階的に引き下げられ、最終的に撤廃されます。いつ、どの規模の会社から対象になるのか、何を準備すればよいのかを、厚生労働省の資料にもとづいて整理します。

いつから・どの会社が対象か

短時間労働者の社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象を広げる「適用拡大」は、これまで対象企業の規模を段階的に広げてきました。2025年(令和7年)6月13日に成立した年金制度改正法では、この企業規模要件を2027年(令和9年)10月から段階的に引き下げ、2035年(令和17年)10月に撤廃することが定められています。判定に使うのは総従業員数ではなく、厚生年金の被保険者数です。

時期対象となる企業規模(厚生年金の被保険者数)
現在(2026年時点)51人以上
2027年(令和9年)10月〜36人以上(36〜50人の企業が新たに対象)
2029年(令和11年)10月〜21人以上(21〜35人の企業が新たに対象)
2032年(令和14年)10月〜11人以上(11〜20人の企業が新たに対象)
2035年(令和17年)10月〜企業規模を問わず対象(1〜10人の企業も対象=企業規模要件の撤廃)

10年をかけて対象を広げ、最終的には会社の規模に関係なく、条件を満たす短時間労働者は社会保険に加入する形になります。小さい会社ほど「うちはまだ関係ない」と考えがちですが、施行日は法律の本則で定まっており、順番に対象になっていきます。

そもそも適用拡大とは何か(加入の5要件)

パート・アルバイトなどの短時間労働者が社会保険に加入するかどうかは、次の5つの要件で判定されます。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上であること(賃金要件)
  3. 継続して2か月を超えて使用される見込みがあること
  4. 学生でないこと
  5. 勤務先が特定適用事業所であること(企業規模要件)

今回2027年10月から段階的に撤廃されるのは、このうち⑤の企業規模要件です。①〜④の要件は残ります。なお②の賃金要件(8.8万円)も同じ改正法で撤廃が予定されていますが、その施行日は「法律の公布から3年以内に政令で定める日」とされており、具体的な期日はまだ確定していません(本記事執筆時点)。企業規模要件の撤廃とは施行時期が異なる点に注意が必要です。

企業規模要件は「厚生年金の被保険者数」で数えます。パートを含めた総従業員数ではありません。フルタイムに近い働き方で既に社会保険に入っている人の数が基準になります。

自社が新たに対象になると何が起きるか

企業規模要件の引き下げで自社が特定適用事業所になると、これまで対象外だった短時間労働者のうち、要件を満たす人が社会保険の加入対象になります。会社側では次のことが発生します。

加入は本人にとって、将来の年金額が増える、傷病手当金など健康保険の給付を受けられるといった利点もあります。会社としては、負担増だけでなく人材の定着という観点でも捉えておくと、対象者への説明がしやすくなります。

中小企業がいまから準備できること

施行日までに時間があるうちに、次の順番で自社の状況を整理しておくと、対象になったときに慌てずに済みます。

  1. 自社の厚生年金の被保険者数を数え、上の表のどの段階で対象になるかを把握する
  2. 週20時間以上働くパート・アルバイトを洗い出す
  3. 対象になり得る人が加入した場合の会社の保険料負担を試算する
  4. 対象者への説明の準備(手取り・扶養・将来の年金への影響)をしておく

就業規則や労働条件の整理をあわせて行う場合は、中小企業向けの就業規則ひな形(無料ダウンロード)も参考になります。

混同しやすい点の整理

「106万円の壁がなくなる」という話と、この企業規模要件の撤廃は、同じ改正法の中の別々の変更です。

賃金要件がいつ撤廃されるかは、全国の最低賃金の引き上げ状況を見極めて判断するとされています。混同して「2026年や2027年にすべての壁が一度になくなる」と考えないよう注意してください。

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よくある質問

社会保険の適用拡大で企業規模要件はいつ撤廃されますか?

2027年(令和9年)10月から段階的に引き下げられ、2035年(令和17年)10月に企業規模を問わなくなります。厚生年金の被保険者数で、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月からは規模を問わず対象です。

自社は何人から対象になりますか?

判定は厚生年金の被保険者数です。36〜50人の企業は2027年10月から、21〜35人の企業は2029年10月から、11〜20人の企業は2032年10月から、1〜10人の企業は2035年10月から対象になります。

賃金要件(106万円・8.8万円)も同時に撤廃されますか?

賃金要件の撤廃は、法律の公布から3年以内に政令で定める日とされており、具体的な施行日はまだ確定していません。企業規模要件の撤廃(2027年10月から)とは施行時期が異なります。

従業員数は総人数で数えますか?

総従業員数ではなく、厚生年金の被保険者数で数えます。この人数で特定適用事業所に当たるかどうかを判定します。

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2026年〜2027年に施行される制度改正の施行日と数値は、制度改正の早見表にも出典つきでまとめています。
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出典(一次情報・いずれも2026年7月23日に確認)
  1. 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html
  2. 厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」(PDF・施行期日を含む)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001496971.pdf
  3. 厚生労働省「年金制度改正法 法律説明資料(詳細版)」(PDF・適用拡大/在職老齢年金/標準報酬月額のスケジュール)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001653903.pdf

本文中の施行日・基準額・スケジュールの記述は、上記の厚生労働省の公表資料にもとづいています。施行日が「政令で定める日」とされ未確定のものは、その旨を本文中に明記しています。

※本記事は一般的な情報提供のための解説です。制度の詳細な運用や個別の事案への当てはめは、事業の内容や事実関係、今後定められる政令・省令によって変わることがあります。最新の正確な情報は、厚生労働省・日本年金機構・年金事務所にご確認ください。社会保険労務士による個別相談・書類の作成代行ではありません。